さぁ、物語が幕をあけます
物語―――特定の事柄の一部始終や古くから語り伝えられた話をすること、または文学形態の一。作者の見聞や想像をもとに、人物・事件について語るもの。
私は語り手。その物語を紡ぐもの、とでも申しましょうか。いやなに、そんなに大それたものでもありません。さあさあ、気を楽にして。
物語にはまず、主人公が必要ですね。
今回の主人公は リョウ・シルセディア。運命に翻弄される者の一人です。
簡単に、その方の説明をいたしましょうか。
今年で十五歳となります。髪はアッシュブラウン。瞳は―――アッシュブラウン、と此処では申しておきますね。
何でも屋という仕事を一人でやっています。依頼された仕事は何でもこなす、便利屋ともいう職業です。
若干にして、十五歳という若い年齢ではありますが、その身体能力は大人も目を見張るほどです。
さて、このリョウにまつわる話をする前に、一つ、短いお話でもしましょうか。
いえ、実のところをいうと、まだこのリョウの話である“CARVARIA”を話す準備が終わっていないのですよ、いやはや申し訳ない。
話が気になるところでしょうが、どうかこのお話を聞いてやってくださいね。
これは この国に古くから伝わる神話。
この世界を作った大神トディス。そして、その大神に作られた十一の神々の話―――
Prologue
あるところに“トディス”という神がいました。
トディスはまず、小さな小さな星をつくりました。
そして、トディスは自分の化身を作り出し、その者にこの星の中身を作らせようと考えました。
そこで生まれたのが十一の子供の姿をした神々なのです―――
光を司る“美しきフェルディア”は
この世界の朝と昼を創りだし、
闇を司る“冷酷なディオンド”は
この世界の夜を創りだします。
天地を司る“力強きベルシドーウ”は
世界を踏み鳴らして山や谷を創り、空を作りました。
水を司る“清らかなるレディアフィン”は
そこに雨を降らせ植物を育て、海と川を創りました。
氷を司る“冷たきデスディティ”は
その水を凍らせて、冷気を、
炎を司る“熱きソディア”は
植物を燃やし、熱を作り出しました。
そして風を司る“優しきウィディネル”は
風を巻き起こし、熱と冷気を世界中に広めました。
そしてトディスはその神が創った世界に、我々人間を下ろしました。
人間は初めのうちは自然と共存して生きていましたが、
時がたつにつれて、彼らは尊きものの存在を忘れるようなりました。
植物を燃やし、水を汚し、大気を汚し、大地を汚しました。
しかし、それを見かねた雷を司る“怒れしサレディス”
そして、破壊を司る“冷酷なヴォルソーン”は、
人間を滅ぼそうと、雷を下し 地震を起こしたのです。
しかし、幻を司る“慈悲深きイルデシュード”は
人間を可哀想に思いその二人に幻を見せました。
その幻に二人は見惚れ、人間への怒りさえをも忘れてしまったといいます。
そして、創造を司る“憂いのコーディアス”は
その壊された世界を少しずつ修復していったのです―――
これが、私たちの星に古くから伝わる代表的な神話です。
おやおや?初めて聞きましたか?そうでしょうねえ。代表的な神話とはとはいいましても、それぞれに神をまつる人々はまずいません。数少ない宗教信者や教会などのみで、ひっそりと成り立っているのが今の現状です。
しかし、この神話はなかなかに奥が深いのです。
子供に伝えるための神話のなかに、時には大変なことが隠されているのですよ。
さて、ここだけの話なんですが、この神話には続きがあると語られています。
ごく一部の者にしか知られていないという、この神々の末路!
久々に、お話するとしましょう――――おや?
本当に今日はタイミングの悪い日だ。
たった今、話の準備が終わってしまったご様子。
まぁ これはまた今度の機会にでも―――という事にしましょうか。
ああ、そうだ!先ほど出てきた神々のお名前、いくつかでも覚えていますか?
いえいえ、別に覚えなければいけないなどということはないのですよ。ただ、少し記憶にとどめておいていただければ、幸いだなあと。
え?そんなことはいいから、はやく話を?はいはい。せっかちなのは若い証拠ですねえ。
では、今回のメインのお話の始まりです――――
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